荒井和子 あらい かずこ さん

気がつくと、何か新しいことをやっている気がします(笑)

 ころころ、まんまる。全国的(もしくは世界的?)にみても珍しい「薄皮丸ナス」は、山形おきたま伝統野菜の1つ。夏の時期、置賜地方の家庭や飲食店では、ほぼ100%と言っていいほど、この漬け物が食卓に登場します。この「薄皮丸ナス」の漬物や米粉シフォンケーキ等をインターネットや地元川西町の直売所等で販売している『まっ直ぐ屋』を運営している荒井和子さんは、もともと漬け物づくりが大好きで、自宅の畑で採れた野菜を漬けては職場や友人に振る舞っていました。

 そんな和子さんが『まっ直ぐ屋』を開業するきっかけとなったのは、8年間の介護を終えた頃。それまでの介護生活の緊張がとけたのか、逆に体調を崩してしまいます。鼻血がとまらなくなるなどの体調不良から、病院通いがはじまり、結果退職することに。しかし、根っから働き好きな和子さん、静養しながらも、自宅の隣に加工所を建てる準備を始めます。実は以前から「いつかはお店を持ってみたい。」という夢があったのです。


皮が薄くパリッとした歯触り。和子さんの漬け方は、ミョウバン以外の添加物は使わない昔ながらの味。


畑10aのほか、そばと水田を手がける兼業農家。「ときどきたぬきが通って行きます(笑)」

 その加工所の基礎工事はご主人が担当。日曜大工が趣味とあって、看板や棚づくりもお手のもの。店の名前は、東京で暮らす娘さんが命名してくれました。「最初は少し恥ずかしかったんですけど、すぐにみなさんに覚えてもらえて」。そして商品のラベルは、デザインの仕事をしている娘さんのご主人作。「家族だから、ちょっと話せば私の考えを理解してくれる。好きな仕事ができて、応援してもらって、本当に幸せです」。こうして、家族の協力に支えられ、平成20年に念願の『まっ直ぐ屋』を開業します。

 「通信販売をするには、ホームページが必要になるはず」と、7年ほど前からパソコン教室へ。その2年後、雑誌『現代農業』を読み、「そこに、大切に育てた農産物や加工品の良さをきちんと伝えるためには、おいしそうに見える写真やチラシづくりが大切と書いてあったんです」。そこで和子さんは次のアクションを開始。カメラを使えるようになるため、写真の講習会に参加しました。その甲斐あって、無事自作のホームページも開設。去年の1月からはブログも始めました。


なすの浅漬けは250g入り(600円)と450g入り(1,000円)。7月〜9月までの限定です。


縁側にあるパソコンスペース。「インターネットを使いはじめて、世界が広がりました」。

 『まっ直ぐ屋』の販売の主力は採れたての野菜を使った漬け物ですが、置賜出身で県外に暮らしている方たちからは、生なすの注文も多いとか。「できるだけ採れたてを届けたいので、出荷ぎりぎりの時間に収穫しています。なので運送会社では、すっかり駆け込みの常習者になってしまって(苦笑)」。

 さらに昨年、自家産米のはえぬきを使った米粉のシフォンケーキも登場。もともとお菓子づくりも好きだったそうですが、小麦粉で作るケーキと違い、思うように膨らまないのが苦労した部分。講習会に通って基礎を学び、何度も試作した末に完成した一品です。

シフォンケーキは、紅茶、オレンジ、レモン、抹茶小豆の4種類。直売所では、季節の果物を使った味が並ぶことも。


娘さんご夫婦が作ってくれたパンフレット。

 スポーツも大好きな和子さん。中学から始めた卓球を社会人になってからも続けていいたそうですが、お子さんがスポ少で剣道を始めたとき、練習を見ながら「私もできるかも」と思い月賦で防具を購入。夕食の支度をすませた後は剣道教室へ通い、約10年ほど竹刀を振って汗を流してきました。また、雪が降り始めるオフシーズンは、スキーをかついでゲレンデへ。さらに52歳のときにはボードも体験。「教えてくれた先生が、素質がありそうとほめてくれたのがうれしくて。横滑りの方がラクだし、いまはもっぱらこっちです」。ご主人も2年ほど先に始めていたので、いまは2人でボーダーになりました。

 大自然の恵みを通した仕事と趣味を楽しみ、栽培から加工・販売までという6次産業を1人で行う和子さんにとって、川西町の魅力とは?「人が助けてくれること。店を始めたときも、あそこで出店できるよと教えてくれたり、誘ってくれたり。みんなが声をかけてくれるので、あたたかい土地柄です」


「つたないながらも、まっ直ぐ屋の名の通り、誠心誠意、まっ直ぐに、がんばっていきたい」と今日も畑に。


やわらかな花びらが特徴のなすの花。畑では約500本を栽培。


ホームページでは、県外に住んでいる川西町出身の人達から「ほかの土地では手に入らないから」と、生なすの注文が多いそうです。

安心手作り、自然の味を大切に『まっ直ぐ屋』

  • 通信販売では、自家製野菜の漬け物のほか、生ナスと漬け汁をセットにした漬け物セットも人気。お菓子は米粉のシフォンケーキと、地物の紅大豆を使ったムース。秋からは自家栽培米ヒメノモチを使ったみそもちも登場。
  • 地元では、こまつ市(JA山形おきたま川西支店東側駐車場)、げんき熊野市(宮内しんまち商店街)、おしょうしな市(置賜総合支庁玄関前)などで出品しています。
  • ホームページ:商品紹介のほか、農園の様子なども画像付きでアップ。随時更新中です。
    http://www.massuguya.net/