「家のとなりに畑がある、こんな暮らしって素晴らしい。」
そう語るのは、川西町の中でも山あいの地域、玉庭にやってきた横山夫妻。飯豊町出身の大樹さんと長野出身の葉子さんが、結婚を機にそろって山形県内で暮らしはじめたころ、玉庭で自然農園を営む大家さんからこの家に住まないか…という電話がありました。
▲終始、静かに一緒にインタビューを受けてくれた息子さん
数年前から自然農を学ぶため、大家さんの営む自然農園へと足を運んでいた横山さん夫妻。人のあたたかさや自然に恵まれた環境の中にあった以前の住まいに後ろ髪をひかれつつも、志す先にある自然農を学んだこの家へと引っ越しを決めたそうです。
「この田畑は、かけがえのない宝物。」と葉子さんは言います。不耕起・不除草・不施肥・無農薬を特徴とする、その農法で耕される大地は年月を経て育まれるとても大切なものだそうです。横山家がやってくるまでに、大家さんによって17年間も自然農法によって育まれてきた畑は、自然の力がたっぷりと養われています。
栄養素を呼吸し、作物が生育しやすい団粒化した宝物のような土壌です。そんな夫妻にとって理想的な田畑を受け継ぎ、玉庭での暮らしがスタートしました。
大樹さんは、木工家具製造のお仕事のかたわら田畑をつくる毎日。葉子さんは、絵の展示やイラストのお仕事を休業して、11ヶ月になる息子さんの子育て真っ最中。そんな葉子さん、大好きだった大草原の小さな家の物語に憧れて、いつか自給自足の暮らしをするのが子どもの頃の夢だったそうです。
▲家の中には大樹さんの作業場も
冬には、積雪が1.5〜2メートルにもなる雪深い地域。大樹さんの心配は、豪雪初体験の葉子さんです。
大樹さんの仕事帰りが遅くなるのはいつものこと。「家の前の除雪は夕方までと聞いているから、帰りには間に合わなそう。11月に入って晴れ間も少ない冬空。雪もそれほど降らないふるさとの長野とはやっぱり違う。」と不安いっぱいの葉子さんでした。
大樹さんの実家は農家。農業を知っていたとは言いつつも、田や畑の除草をせず、耕さず肥料や農薬を使わない、自然農法のやり方に驚きの連続だそうです。
今年は、キュウリに大豆、小豆とお米づくりにチャレンジ。
「不耕起の田は、代掻したやわらかな田んぼとは違うから、鎌を片手に、土を切りながらの田植えはとても大変だった。」と大樹さん、今年は田植えに予定をオーバーして3週間もかかったそうです。
「とても大変で、少しの収穫しかなかったけれど。そ
れでも大切な人が食べるものは、安心で安全で美味しい物ってなによりだと思う。」と見せていただいた玄関先の稲穂はとても輝いていました。
「ちょっとした身の回りのものを手づくりしながら、自然農の畑でいろいろな作物をつくっていきたい。」
玉庭に暮らし始めて半年。気さくでやさしい近所の人たちから採れたての野菜のおすそわけをもらったり四季の移ろいをより近くに感じたりと自然のサイクルに寄り添うライフスタイルに一歩ずつ近づきつつあるようです。
▲田んぼで採れた稲の穂